大会長挨拶
第7回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会
大会長:井上真奈美(国立がん研究センターがん対策研究所 予防研究部 部長)
テーマ:ヒューマンデータ研究の近未来
近年は、疾病研究の様々な場で、ヒューマンデータ、すなわち、人を対象とした研究データを活用した分析が随分身近なものとなっています。
もともとヒューマンデータの成り立ちについては、各疾患の特性やデータのニーズによって様々な発展を遂げてきました。例えば、がんでは、概して、がんに至る前にモニターするような病状指標がないので、まず、がん診断・罹患をおさえるためのがん登録の仕組みづくりが国際標準で進み、診断前の生活習慣情報、がんの診断情報、治療、予後情報が一腫瘍一レコードにのったヒューマンデータが、がん研究のベースとなっています。一方、循環器疾患のように、臨床上、脳梗塞や心筋梗塞などの本丸の疾患の診断がつく前に高血圧等の病態を疾患としてコントロールすることが可能で、これらの重要な検査情報のモニタリングを可能とするヒューマンデータとその利用が研究のベースとなっています。更に糖尿病では、診断された後の治療管理とモニタリングが重要なことから、診断後の治療や併存病態マネージメントに関連するデータが潤沢なヒューマンデータベースの構築と利用が進んできたという背景があります。臨床疫学領域が循環器や代謝系疾患領域で精力的に展開されてきたのも頷けます。
第7回年次学術集会は、国立がん研究センターが東京築地に皆様をお迎えして開催します。せっかくがん専門機関が学術集会を担当することになりましたので、近年のがんのヒューマンデータ研究の領域で、国内外で起こりつつある新たな研究の展開について紹介し、様々な疾患ターゲットでヒューマンデータ研究を手がけている先生方とよりよい展開について論じる機会としたいと思います。前述したように、ターゲットとする疾患が異なる研究者とヒューマンデータ研究の近未来像を共有することにより、新たな研究展開の手がかりを得ることを期待しております。
ハイブリッド開催で準備を進めておりますが、状況が許せば、是非、東京築地の地にお越しいただき、直接お会いできますことを楽しみにしております。