第39回アルコール医学生物学研究会学術集会

ご挨拶

第39回アルコール医学生物学研究会学術集会
開催にあたって




第39回アルコール医学生物学研究会学術集会
会長 池 嶋 健 一
順天堂大学大学院医学研究科 消化器内科学


アルコール医学生物学研究会(JASBRA)は、昭和56年に開催されたセミナー「アルコール代謝と肝障害」に端を発した「アルコール代謝と肝」研究会を前身として発足し、平成の30年余を経て、この第39回学術集会が令和になって初の開催に当たります。その間、平成元年(1989年)のC型肝炎ウイルス発見に伴い、平成はわが国の肝臓病学がアルコールを中心とした代謝生化学 からウイルス肝炎・肝癌に関わるウイルス学や分子生物学に大きくシフトしていた時代であったと言えます。C型・B型肝炎の抗  ウイルス療法が目覚ましく進歩し、特に直接型抗ウイルス薬の登場でHCVの排除が極めて高率に達成出来るようになった現在、メタボリックシンドロームを基盤とした非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など、新たな視点から肝蔵の代謝病態への関心が高まってきており、再び大きな転換点を迎えています。私たちは、今ここにアルコール医学研究の国際的潮流を捉えて、令和の新時代を切り開いていく責務があります。そこで、本学術集会のテーマを“アルコール医学の新時代を拓く(Exploring the new era of biomedical research on alcohol)”といたしました。このような節目に当たる折に本研究会の学術集会を開催させて頂けることは望外の僥倖であり、この大役にとご推挙下さった運営委員長の竹井謙之教授ならびに運営委員関係各位に深謝申し上げます。

本研究会の大きな特色として、アルコール医学生物学という観点から、臨床系および基礎系のさまざまな領域の専門家が集い、学際的に討議する場が培われてきたことが挙げられます。しかしながら、医学界全体を見渡すと、わが国においてはアルコール 医学への関心が高いとは言い難く、その根底にはアルコール関連問題に対する容易には払拭し難い偏見があるようにも思われ ます。そのような現況を打破すべく、今回の学術集会開催に当たって、いくつかの新たな方策を模索しました。第一に、研究会の  国際化を図るべく、海外から第一線の研究者を招聘し、English sessionを随所に導入しました。特別講演には恩師でもあるカリフォルニア大学サンディエゴ校副学長のDavid A. Brenner教授を迎え、アルコール性肝障害のメカニズムに関わる免疫病態についてお話頂く予定です。また、アルコール医学生物学の泰斗として一世を風靡しつつも早逝した、もう一人の恩師である故Ronald G. Thurman教授(1941-2001)の名を冠した国際シンポジウムを開催し、その弟子の筆頭に挙げられるピッツバーグ大学のGavin E. Arteel教授および、当該領域で国際的にご高名な南カリフォルニア大学の塚本秀和教授にkey note lectureとしてご講演頂き   ます。第二に、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップ等の主題セッションを充実させ、より幅広い領域の専門家を 招聘することにより、会の活性化を図りました。消化器領域でも、肝臓のみならず消化管・膵臓の各領域のオピニオン・リーダーにご登壇頂き、トピックフォーラムやセミナーでも基礎から臨床に渡る学際的な構成を試みました。

今回の学術集会は順天堂大学お茶の水キャンパスの新研究棟(A棟)講堂で行うこととさせて頂きました。前年にI期が竣工  したばかりの建物で、まだエントランス部分は工事中のためご不便をおかけしますが、本会開催に向けて、スタッフ一同、心からの“おもてなし”をモットーに準備させて頂いております。一人でも多くのご参加を心よりお待ちしております。

2020年1月