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会長挨拶

【第74回日本自律神経学会総会の開催にあたって】


第74回日本自律神経学会総会
会長 加藤 総夫
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 神経科学研究部 教授

 この度、第74回日本自律神経学会総会を2021年10月23日(土曜日)、24日(日曜日)に開催することとなりました。この伝統ある学会の歴史ある総会を主催させていただく機会をいただけたことに感謝するとともに身が引き締まる思いです。自律神経科学の学術交流の場として充実した総会とすべく準備を進めております。開催にあたりましては、基礎医学領域に加え臨床医学領域の学術プログラムの充実をはかるべく、東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科 井口保之教授、および、イギリス医学の伝統を東京慈恵会医科大学と共有する鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 桑木共之教授に准会長をお引き受けいただくこととなりました。この場を借りて感謝申し上げます。

 昨今、自律神経科学が対象とする医学研究領域は、広い分野から注目される最も重要な領域の一つとなっています。マスコミでも「脳-臓器連関」がしばしば採り上げられ、「生体恒常性維持・変容・破綻機構のネットワーク的理解」や「脳-身体連関を規定するグリア情報」などを標榜する多くの大型研究計画が推し進められ、その研究者人口も増えています。「実験医学研究序説」でクロード・ベルナールは「いったん現象の分析を行った後、今度はかつて分解した各部分の全体としての作用を見るために生理的綜合を行わなければならない」と述べています。この数10年にわたり進められてきた分析的・要素還元的な分子・細胞レベルの研究成果の蓄積や技術の進歩と成熟は、今、統合的視点に基づいたヒトの生理機能と病態の理解、そしてそれらに基づく診断・治療法の実践に取り組むことを可能にしました。分子・細胞レベルの知見を踏まえつつ、脳と身体を有機的全体としてとらえる生命医科学が必要とされています。自律神経科学こそその先陣を担う医学領域であり、今こそこれらの積み重ねを、患者さんの健康と幸福のために使う時が来たように感じられます。

 このような状況を表現するために、本総会のテーマを「脳臓器連関のトランスレーショナル・ニューロサイエンス」といたしました。脳や臓器で起きている個別の現象の分析に基づいたそれらの間の統合的連関を解明し、さらに診療や治療へ向けて応用していくための情報交換の場になることを企図して本総会を開催させていただく所存です。

 しかし、このような情報交換の場とするにあたり、COVID-19感染拡大防御策としての集会・移動の制限は、例年のような顔と顔を合わせての情報交換を許しません。参加されるみなさまの健康確保と感染拡大予防への協力は、医学に関わるものにとって重要な行動目標であり、そのために今年の総会は、すべてのコンテンツを原則としてオンラインで開催(WEB開催)することといたしました。
 長期化しつつあるCOVID-19との戦いを通じて、電子的な方法でコミュニケーションを維持し、有意義な学術情報交流を進める新たな場と時間の使い方を私たちは学んできました。この第74回総会は、このようなオンライン学会の優れた点を追求し、時間や場所の制約なく参加していただくとともに、議論・討論を可能な限り進められる場となるように計画しております。しかし、この未曾有の状況において、総会を未経験の形式で開催しなければならないことに緊張と不安を感じないわけではありません。至らぬ点や予想できないミスなど、多々ある可能性をご理解下さり、また、お気づきの点やご提案・ご意見などありましたらご指導くださいますようお願いいたします。
 この制限ある状況下ですが、この総会が何らかのきっかけになり新しい自律神経科学の発展の端緒となることを目指したいと願っております。多数の方々のご参加をお待ちいたております。

2021年4月